プレ量産
2024.09.09製品開発において、試作品製作は避けて通れない工程です。しかし、試作品が完成したからといって、すぐに量産に移行することはできません。試作と量産では加工方法が違いますし、製品の強度や生産コストなど量産に入る前に様々な検証を行う必要があります。
そこで、試作から量産への橋渡しとなるのが「プレ量産」という工程です。この工程は、製品の品質を安定させ、コストを削減するために欠かせないステップです。プレ量産の意義とそのメリット、そして実際の工程について詳しく解説します。
プレ量産とは?
前述のように、試作品が完成したからといって、すぐに量産に入れるわけではありません。試作品はあくまでも、製品の機能やデザインを確認するためのものです。本格的な量産に入る前に、試作品よりも多くの数量を、量産に近い形で製造する工程が必要です。
その工程が、プレ量産(パイロットラン)です。
試作とプレ量産、量産の違い
プレ量産の役割を理解するために、まずは「試作」と「プレ量産」、「量産」の違いについて解説します。
試作 | プレ量産 | 量産 | |
---|---|---|---|
目的 | 製品の機能・デザインの確認 | 量産体制の検証、品質の安定化 | 製品の安定供給 |
数量 | 数千個 | 数千個〜数万個 | 数万個〜 |
金型 | 試作用 | 量産用または量産に近いもの | 量産用 |
試作は、あくまで製品が設計通りに製造できるかを確認する段階です。製作数が少ないため、1個あたりの金額は高くなります。一方、量産は、製品を市場に安定供給するための工程です。高品質な製品を効率的に生産するために、専用の設備や金型を導入します。大量に製作するため、単価は安くなります。
プレ量産の位置付けと役割
プレ量産は、試作と量産の間を埋める重要な工程です。量産試作ともいわれます。試作品で問題がなくても、量産段階になってから、
- 製品に不具合が発生する
- 生産効率が上がらない
- コストがかかりすぎる
といった問題が発生する可能性があります。
プレ量産は、これらの問題を事前に発見し、解決するための工程です。
具体的には、
- 量産用の金型、もしくはそれに近い金型で製造を行い、品質や生産効率を検証する。
- 量産を見据えた製造ラインを構築し、作業効率や問題点を洗い出す。
- 実際に近いコストで製造を行い、採算性を見積もる。
といったことを行います。
プレ量産の重要性
プレ量産は、品質の安定化とコスト削減の両面から必要な工程と言えます。
近年、製品のライフサイクルは短縮化しており、市場投入までのスピードが求められています。一方で、市場投入後に製品の不具合や品質問題が発生すれば、企業の信用が低下し、大きな損失を招く可能性があります。
プレ量産をしっかりと行うことで、
- 量産開始後のトラブルを未然に防ぐ。
- スムーズな量産開始を実現する。
- 結果として、コスト削減や納期短縮にも繋がる。
などが期待できます。
プレ量産のメリット
プレ量産には多くのメリットがあります。ここでは、プレ量産がもたらす具体的なメリットについて、事例を交えながら詳しく解説します。
コスト削減
プレ量産は本格的な量産開始前に問題点を洗い出し、手戻りを減らすことで、大幅なコスト削減が可能となります。例えば、金型の設計変更など、量産開始後に行うとなると多大な費用が発生します。プレ量産段階で発見して修正すれば、結果として大きなコスト削減につながります。
納期短縮
プレ量産によって量産開始前の課題を解決しておくことで、製造ラインのトラブルを未然に防ぎ、スムーズな立ち上げを実現できます。トラブルの種を事前に取り除いておけば、納期の遵守が確実になります。
品質向上
量産前に品質の確認や改善を行うことで、高品質な製品を安定供給できます。製品設計の微調整による不良率の低減、製造工程の最適化による品質の向上などが挙げられます。
リスク軽減
プレ量産は、潜在的な問題点を事前に洗い出し、量産開始後のトラブルやリスクを回避できます。例えば、量産開始後に製品の欠陥が見つかり、大規模なリコールが発生するリスクを、プレ量産によって未然に防ぐことが可能です。
プレ量産の進め方と評価方法
プレ量産段階での評価・検証は、量産開始後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな立ち上げを実現するために欠かせないプロセスです。ここでは、プレ量産の進め方と評価について説明します。
評価対象
プレ量産では、以下のように製品の品質と生産効率の両面から評価します。
製品の品質評価指標
機能性、耐久性、寸法精度など、製品の品質を評価する指標を設定し、これに基づいて製品を評価します。
生産効率の評価指標
生産速度、稼働率、廃棄率などの生産効率指標を用いて、製造ラインのパフォーマンスを評価します。
プレ量産の工程
プレ量産の主な工程は以下の通りです。
製造ラインの設置と調整
量産を想定した製造ラインを組み立てます。ここでは、製造設備の最適化や作業流れの調整を行い、効率的な生産体制を構築します。
初期ロットの生産
設置した製造ラインで初期ロットを生産し、実際の製造条件下での性能を検証します。この段階で、製品の品質や生産効率をチェックします。
製品の詳細評価
初期ロットから得られた製品を詳細に評価し、設計通りの品質と性能が確保されているか確認します。
品質管理体制の構築
プレ量産では量産を見据えて、品質の評価も行わなければなりません。具体的には、以下のような取り組みを実施します。
品質基準の設定
プレ量産では、製品の品質基準を明確に設定し、それに基づいて評価を行います。顧客の要求仕様や法規制を基準として決定します。
検査体制の整備
プレ量産の段階で、製造過程において発生する可能性のある欠陥を迅速に発見し、即座に修正できるような体制が必要です。
結果の分析と改善策の検討
最後に、プレ量産で得られたデータを分析し、改善策を講じることで、量産体制の最適化をめざします。実際に行う改善策としては、金型の微調整や作業手順の最適化などがあります。
フィードバックの活用方法
試作やプレ量産を行ったときには、量産に向けた情報を集める必要があります。ここでは、試作品やプレ量産品の評価項目と基準、得られたフィードバックを設計・製造プロセスにどのように反映させるかについて解説します。
試作品・プレ量産品の評価項目と基準
試作品・プレ量産品の評価では、以下のような項目が重要です。
機能性
試作品が設計された機能を十分に果たすかを検証します。
デザイン
外観や形状が設計通りであるか、顧客の要望を満たしているかを確認します。
耐久性
製品が実際の使用条件に耐えうるかどうかを評価します。
製造可能性
量産時に問題がないか、製造工程で問題が発生しないかをチェックします。
コスト
試作品の製造コストが予算内に収まっているかを確認し、量産時のコスト予測に役立てます。各種試験を実施し、各項目のフィードバックを収集・分析します。
設計・製造プロセスへの反映
得られたフィードバックは、以下のプロセスを通じて設計・製造に反映されます。
設計の見直し
フィードバックを受けて設計図面を修正し、機能やデザインを最適化します。
製造プロセスの改善
製造における問題点を洗い出し、製造ラインや工程を見直すことで効率化を図ります。
プロトタイプの再試作
必要に応じて、修正を加えたプロトタイプを再試作し、改善点が解決されているかを確認します。
コスト削減と品質確保のバランス
製品の製造には、コスト削減と品質確保の両方が求められます。ここでは、それぞれのポイントと、バランスをとるための方法について説明します。
コスト削減のためのポイント
問題の早期発見による手戻りの防止
プレ量産の段階で設計や製造工程に潜む問題を発見・修正することで、手戻りを防ぐことができます。
材料や部品の最適化
プレ量産の段階で最適な材料や部品を選定すれば、無駄なコストを削減しつつ、量産時にコスト効率の良い生産が可能になります。
工程効率の向上
プレ量産段階で製造工程の効率化を図ることができます。無駄な工程や時間がかかるプロセスを改善し、全体の生産コストを抑えることが可能です。
品質確保のための取り組み
品質基準の設定と評価
プレ量産では、品質基準を明確に設定し、これに基づいて製品を評価します。
自動検査装置の導入
最新の自動検査技術を導入すれば、品質検査を効率化し、ヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。
コスト削減と品質確保のバランスのとり方
コスト削減と品質確保は、相反する要素に見えることがありますが、適切にバランスを取れば、両立できます。
コストと品質の最適化
コスト削減を追求するあまり、品質を犠牲にすることは避けるべきです。試作段階から計画を立て、必要最低限のコストで品質を維持することを目指します。
データの活用
プレ量産で得られたデータを活用し、定量的な評価に基づいてコストと品質のバランスを調整します。
改善の継続
プレ量産から得られた知見を活かし、継続的に改善を行うことで、長期的にコスト削減と品質確保のバランスを維持します。
製品開発を成功へと繋げるには
試作やプレ量産段階で得られたフィードバックを活用し、潜在的な問題点を早期に発見できれば、量産開始後の修正や不具合発生のリスクを大幅に軽減できます。
得られたフィードバックをもとに、設計・製造プロセスを以下のように改善していきます。
設計の最適化
試作から得られたデータを分析し、設計上の問題点や改善点を洗い出します。具体的には、機能性やデザインの調整、材料の最適化などが含まれます。
製造プロセスの改善
フィードバックを基に、製造工程全体を見直し、効率化を図ります。これには、製造ラインの最適化や作業手順の標準化、設備のアップグレードが含まれます。
品質管理の強化
フィードバックを活かし、品質基準の見直しや品質管理体制の強化を行います。
継続的な改善ループの構築
試作段階で得られたフィードバックをリアルタイムで製品開発に反映させる体制を整えます。
以上のようにフィードバックを活用して継続的に改善を行えば、製品の品質向上、コスト削減が実現し、ひいては企業の競争力を高めることができます。